腕は振り切らない
腕を最後まで振り切ってはいけません。
というと、そんなばかなと思うでしょう。
フォロースルーは振れば振るほど良い、大きければ大きいほどよいと単純に考えている人が多いので、ここで注意しておきます。
肩からひじにかけての部分は自然に任せてください。決して、振り切ろうと思ってはだめです。
ゼロポジションのところでお伝えしたように、肩が自然に動ける範囲というのは、肩甲骨の先と腕の骨が一直線になった場合に限られます。
ゼロポジションがとれる範囲は、各自の柔軟性によって変わりますが、自然な限界があります。
自然に任せて投げれば、投球後のエネルギーはゼロポジション内ですべての筋肉や腱によってバランスよく吸収されます。
○キンブレル投手の投球フォームスローモーション
動画開始12秒前後に注目してください。球をリリースした直後、肩がゼロポジションにあるうちに、腕がブルブルっと高速で左右に捻られて力が吸収されています。
このように、自然なフォームで自然な腕の振りをすれば、腕が振り終わったあたりでなく、リリース直後あたりが本当の意味でのフォロースルーになるのです。
これが、肩に負担をかけないフォロースルーになります。
ところが、最後まで振り切ろうとしてしまうと、肩がゼロポジションを外れて、エネルギーがバランスよくに吸収できずに、肩の特定の筋肉や腱にダメージを与えます。
このような場合に、一番ダメージを受けることが多いのが三角筋です。腕の一番上の外側の筋肉ですね。
肩の故障の原因は、ゼロポジションを外れたバランスの悪い位置で変な力が入って起こることがほとんどです。
投球中は「ひじが下がるのはいけない」という知識が流通しているので外れることはあまりないのですが、
投球後のフォロースルーは盲点になりやすいので気をつけてほしいところです。
ちなみに、キンブレル投手は腕の動きが、トップから楕円形の軌道で振られるタイプの投手ですが、
リンスカム投手のように真円に近い軌道で振られる投手もいます。(特にオーバースローの投手)
その場合、腕が最後まで振られているように一見、見えますが、
スローで見ると、やはりリリース直後の「ブルブル」でほとんどのエネルギーを吸収しているのがわかると思います。(動画の00:29前後)
こういったことはスローで動画を見ないとまずわからないところです。